The story of Naocastle ~スイスでの日々パート1~ 第六章

False friends are like our shadow,
keeping close to us while we walk in the sunshine,
but leaving us the instant we cross into the shade.
- Christian N. Bovee(1820-1904, American author, lawyer)


「偽りの友というのは、我々の影のような存在である
日向を歩む時は傍にいるものの、日陰に入った瞬間に去ってゆく」


最初の3試合は労働ビザが下りなかったのと、オーストラリアでの最後の試合で
イエローカードをもらい、イエローの枚数で出場停止を食らっていたので試合には出られませんでした。
しかし監督は相当試合に出したかったのか、出場OKとなった試合からは即効メンバーに入ってベンチに座り、最初の途中出場選手として30分ぐらい使われ、数週間後にはスタメンの座を勝ち取っていました。


家、車付きの条件で結んだ契約は僕にとっては夢のような話で、
このまま試合にずっと出られれば、日本代表も夢ではないとさえ思いはじめていました。
そこへ…


グシャッ!


練習で削られ、足首の靭帯をやられて1ヶ月の怪我。
甘かった。あまりにも甘すぎた。


どんだけの人間がプロになれると思ってんねん?生活がかかってんねんぞ。
外国から来た日本人選手なんかにポジションを取られて、黙ってる訳がないやんけ。


無駄にした一日は一生取り返せない。
一日一日、100%集中して取り込む事を改めて思わせられた出来事でしたね。


練習場に行くと周りの人間からは、
「おいおい、ナオキ、ホリデーか」?
もちろん嫌味の入った冗談ですが、それが悔しければはじめっから怪我をするべきではない。


しばらくは歩く事もちゃんと出来なく、足を引きずりながらフィジオセラピーへと…


「どおや?スイスのメンタリティには慣れたか?」


スイス人だが、アメリカとかにも住んだ事がありオープンマインドなフィジオセラピーの彼が聞いてきた。
ん?具体的にどういうところがですか?と聞き返すと…


「全員が一匹狼である事かな。後は、知ってのとおりヌシャテルはスイスの中ではフランス圏に中る。
英語が嫌いな事がわかるような経験はもうしたんじゃないか?まあ基本的に、外国人を認めない傾向があるのかもな。」


確かにレストランで一つメニューを頼むのでも、郵便局で荷物を送るのでも、
英語を喋ったら思いっきり無視されて大変でした。
喋れるくせに、喋らないのは、どうかと思いますが。笑
他にあった事と言えば、ホテルに泊まっている時、シドニーに居る母や友達とかから電話がかかってきても英語で喋ると電話を繋いでくれない時がありました。


この時はまだ気付いてなかったのですが、ずっと僕や他の外国人選手達の事を無視し続ける連中がチームの中に居る事に半年後に実感しました。
半年という時が経っても、会話をしていないチームメートが何人も居ました。
喋りが大好きな僕にはこんな事はかなり珍しい事であり、冗談を言ったり、ふざけ合えないのがかなり苦しかったです。


郷に入れば郷に従え。
という言葉があるように、その国のルールに従い、その国の言葉をいかに早く覚えようとする事がどんだけ大切な事かを改めて思い知らされましたね。
やはり、習慣や言葉を習おうとする姿勢はそこの国の人々に対するリスペクトであり、フランス語を習ってはいたものの中途半端にやっていた僕は人間として失格でしょう。


「ヨーロッパのサッカーは厳しいビジネスだ。生き残るためには絶対強くなければいけない。時には嫌な奴に徹する事も必要だろう。人間関係でもプレーでも汚い事を平気でしなければいけない。」
僕が納得している訳ではないのですが、この言葉はベテラン選手、監督、代理人等、色んな人から言われました。


確かにヨーロッパでのサッカーは、もうスポーツを超えて大半にとってはビジネスでしかない。
選手なんて例えて言えば道具みたいなもんでしょう。
いい道具は監督から常に使われて、クラブからも大事にされる。
要らない道具はほったからしにされ、ゴミみたいなものでしかない。
道具箱の中の道具のように、選手も一緒の場所にはいるが、ちゃんとした話をする事はめったになくて、逆に常に気をつけていなければいけません。チームメートに変な事を口走ってしまうとすぐに悪い噂が立ってしまう。


女やギャンブルの話や昨日の晩は飲んで遊びに行ってたなんて言うと、たちまち噂にされ、あいつはここに遊びにしか来ていない等と監督やメディアの耳に入るように仕向けられます。
だから、僕も(怪しいなあ)と思う選手に対しては、しょうもない話しかしませんでした。


そんな発言を聞き逃さないと待っていたり、変な発言を煽る選手もいるからです。
悲しい事ですがほんとの友情が選手の中で生まれる事はヨーロッパでは少ないと思います。


現在FC東京の平山選手がオランダから帰ってきた時に言っていた言葉があります。
ヨーロッパでは底から笑える事が無く、苦笑いか、愛想笑いやと。


はったりばかりいう奴や、愛想笑いで話しかけてきながら、裏で落としいれようとして
いる人間達が溢れている中では無理もないかもしれません。
ほんとに悲しい事ですが、この世界で人を信じる事はあまりしないほうがいい。人を見分けられる能力を身に着ける事も大事だと思います。


僕自身は人間的にも素晴らしい選手に何人か巡り合えて、非常にラッキーだったと思います。
やはりそういう連中とは今でも連絡を取り合うほんとうの仲間たち…

CommentBox

ヌシャテル時代、大変でしたよね。
何にも手伝えなかったことが今でも後悔です。

でも、このお話はスイスだけじゃなく、ドイツのことも含めておっしゃってるんですか?
スイスに限って言えば、ヌシャテルは仏語圏のなかでも特に保守的だと思います。

もちろん「郷に入りては郷に従え」ですが、人を批判する前に自分の能力を考え直してから外国人につらく当たって欲しいと、一外国人としていつも思いますが。。。
言葉は大切ですが、心はもっと大事ですよね!!(負け惜しみ???)

投稿者 sweetchiaki  : (2010年08月23日 04:46)

>ほんとに悲しい事ですが、この世界で人を信じる事はあまりしないほうがいい。

リアルに現場にいた方の言葉なので重いです。

"How are ya mate!"なノリのフレンドリーなオーストラリアとのギャップで余計こたえたのではないでしょうか?

まあでも考えてみれば、普通のビジネスの世界においてもそういう人はいるので、サッカーで生活している人達の中にそういう人がいるのは当然かもしれませんね。

「人を見分ける能力を身につける」これは本当に大切なことですね。僕は色々な人と交流するのが好きですが、自分の言葉でなく借り物の言葉でしか話さない人や、金儲けのことしか考えていない人との意味の無い時間は大嫌いなので、誠実で自分をちゃんと持った人と出会えた時には嬉しくなります。

次回の更新楽しみにしています!

投稿者 BGS GEEK  : (2010年08月23日 08:40)

sweetchiakiさん、

心が一番大事ですね!
確かにチームにもよると思いますがヨーロッパのサッカー界は似た話をよく聞きます。

BGS GEEKさん、

確かにオージーとのギャップがありすぎますね!笑
次回の更新も続きですが、頑張って書きます!

投稿者 Nao  : (2010年08月25日 19:18)

いつも楽しく観ております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。

投稿者 履歴書の添え状  : (2010年08月27日 21:14)

履歴書の添え状さん、
ありがとうございます!!

投稿者 Nao  : (2010年08月30日 20:33)